
 

 

 

 

 

 

 

 



記事投稿日:2011年04月25日
登山に纏わるトラブルの責任問題を実際にあった判例も含めて様々な事例を挙げ解説。
以前から気になっていたこの書籍。
責任があるかと思えばなかったり、責任がないと思えばあったり・・・読んでみると驚く事ばかり。
(法律をよく知らないので偏った「人道的」視点から見ているせいだと思う)
一番気になったのは「善意が仇になる」場合があるという事(内容抜粋転載)
事例:
単独縦走Bが稜線から転落⇒数メートル下の岩壁で停止。
岩壁は急峻でBは自力で稜線に復帰出来ない(登攀道具なし)
たまたま通りかかった縦走AがBを発見。Bが「すぐ助けてくれ」と救助を求める。
Aはロープを持っていなかったので急いで持っていたテントの張綱を繋いでBの所まで垂らす。
Bがそれを掴んで登っている時に張綱が切れて落下した。
Aに法的責任は生じるか?
見解:
Aはたまたま通りかかっただけなので、Bを救助する法律上の義務はない。
しかしAが「善意」でBの救助を行えば「事務管理(民法六九七条)」に基づく「注意義務」が発生する。
「事務管理」とは義務がないにもかかわらず「他人のために他人がすべき仕事や作業」などを行う事をいい、行為者に一定の「善良な管理者の注意義務(通常期待される程度の)」が生じる。
但しこの場合、Aが使用した綱に十分な強度があるかどうかを判断しなかった落度はあるが、上記の緊急事態では冷静な判断を要求しにくい。Aが使用した綱が太さや材質から見て切れやすいことがAに容易に判断できた場合を除き、通常はAに重大な過失があったとは言えないと考えられる。
捕捉:
「善意でしたことに損害賠償責任が生じるのであれば、善意で何もできなくなる」のではなく、
「善意で行うのであれば、それなりの注意が必要」という事を意味する。
(抜粋終わり)
だが実際そういった事態に遭遇した時「善きサマリア人の法」が適用されない日本ではかなり勇気の要る行動であることは確かであり、最悪の場合責任を問われる可能性がある。
「登山はリスクテイキングなもの」と理解はしていても自身に対する事だけと思いがち。
自分だけは「裁判沙汰になるようなことはない」と思っている人に是非読んでもらいたい1冊。
2013/03/30追記
上級救命講習修了。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どれも興味深い事例ばかりだったので各タイトルを紹介(きっと気になるタイトルがあるハズ)
縦走登山
01.登山同好グループの山行:晩秋の悪天候で遭難
02.登山同好グループの山行:置き去りにされたメンバーが死亡
03.社会人山岳会の山行:慣れない岩稜コースでの転落事故
04.単独同士の即席パーティー:稜線から転落し死亡
05.登山道でのすれ違い事故:他パーティーのザックが当って転落
06.他パーティーの救助義務:善意の救助があだに(↑上記例)
07.登山道での落石事故:登山者が誘発した落石でけが
08.登山道での落雷事故:雷注意報の出ているなかを行動して被雷
09.仲間同士の登山における安全配慮義務:仲間の行方不明を放置
10.山行中の物損事故の賠償責任:不注意でテントが燃焼
冬山登山
11.社会人山岳会の山行:メンバーの1人が雪崩埋没死
12.社会人山岳会の山行:雪山初心者の滑落事故
13.大学山岳部の山行:冬山合宿で大学一年生が滑落死
14.公募による冬山登山講習会:受講生が雪崩埋没死
15.公募による冬山登山講習会:受講生が雪庇を踏み抜いて転落死
16.ガイドによる雪山ツアー:雪崩危険区域での雪崩事故
17.ガイドの確保ミス:コンティニュアス・ビレイに失敗し滑落
18.ガイドとの登山:悪天候でルートを見失いビバーク中に死亡
19.最後の食糧:冬山で仲間が衰弱死
20.デポ品の盗難:当てにしていたデポ品がなく遭難
21.雪山での巻き添え事故:他パーティーの滑落に巻き込まれて死亡
22.冬山での救助義務:遭難寸前の登山者に遭遇
岩登り・沢登り
23.岩登りでの落石事故:岩登り中に落石を誘発し他パーティーが死亡
24.ベテランと初心者のパーティー:岩登り初心者にリードさせて滑落
25.岩場での巻き添え事故:トップの滑落に巻き込まれて死亡
26.岩登り中の確保ミス:山岳地帯の岩場での確保の遅れ
27.岩登り中の確保ミス:ロアーダウンの確保に失敗
28.岩登り中の確保ミス:ゲレンデでの注意散漫による確保の失敗
29.初めてのクライミング:トップロープの支点設置ミス
30.ガイドによる沢登りツアー:沢登り中、増水に流されて死亡
ツアー登山
31.民間団体の公募登山:雪山のツアー登山中の滑落事故
32.旅行会社主催のツアー登山:ツアー登山中に参加者が悪天候で疲労凍死
33.ハイキングクラブ主催の公募登山:道迷いで下山遅れ
34.旅行会社の公募登山:ヒマラヤで滑落死
35.旅行会社の公募ツアー:海外でのトレッキング中に高山病で死亡
36.ツアー登山における交通機関のトラブル:重要な仕事に支障が
37.前宣伝との大きな落差:説明内容と異なるツアー登山
38.キャンセル料の取り扱い:ツアー登山のキャンセル
39.外国での災難:知らない間にザックに大麻が
40.外国での災難:海外でのツアー中に交通事故に巻き込まれてけが
登山にともなう諸問題
41.登山用具の欠陥:プラスチック製登山靴の破損による事故
42.登山用具の欠陥:アイスバイルの破損による事故
43.登山道の整備不良:登山コース上の鎖の不備による転落事故
44.林道上での落石事故:林道で落石に遭ってけが
45.記載ミスと遭難の因果関係:ガイドブックの記載間違いによる事故
46.捜索費用の負担義務:雪崩による長期行方不明者の捜索
47.山岳事故と山岳保険:ガイド登山での死亡事故
48.車の事故と保険:山へ向かう途中、車の自損事故でけが
49.免責誓約書の効力:講習会参加者が誓約書を提出
50.山はだれのものか:登山やクライミングの禁止措置
51.岩場はだれのものか:土地所有者が岩場への立ち入りを禁止
52.ルートはだれのものか:岩場の使用方法で対立
53.自然保護と登山の権利:自然保護のための登山の制限
社会と登山
・山岳事故における法的責任
・法的責任とリーダーの権限
・登山における危険性の認識
・危険の引受法理
・ツアー登山の問題点
・外国での登山と自己責任
・良好な自然環境を守るために
・登山と休暇
・登山と転勤
・登山とペット
・登山と自己決定
・登山と法律
・引率登山と自主登山
・法的紛争と人間関係
・現代社会と登山
資料:登山事故関係の判例一覧表
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2012/11/19追記 「救助隊に過失」 積丹岳遭難死 道に1200万円賠償命令 札幌地裁
以前から気になっていたこの書籍。
責任があるかと思えばなかったり、責任がないと思えばあったり・・・読んでみると驚く事ばかり。
(法律をよく知らないので偏った「人道的」視点から見ているせいだと思う)
一番気になったのは「善意が仇になる」場合があるという事(内容抜粋転載)
事例:
単独縦走Bが稜線から転落⇒数メートル下の岩壁で停止。
岩壁は急峻でBは自力で稜線に復帰出来ない(登攀道具なし)
たまたま通りかかった縦走AがBを発見。Bが「すぐ助けてくれ」と救助を求める。
Aはロープを持っていなかったので急いで持っていたテントの張綱を繋いでBの所まで垂らす。
Bがそれを掴んで登っている時に張綱が切れて落下した。
Aに法的責任は生じるか?
見解:
Aはたまたま通りかかっただけなので、Bを救助する法律上の義務はない。
しかしAが「善意」でBの救助を行えば「事務管理(民法六九七条)」に基づく「注意義務」が発生する。
「事務管理」とは義務がないにもかかわらず「他人のために他人がすべき仕事や作業」などを行う事をいい、行為者に一定の「善良な管理者の注意義務(通常期待される程度の)」が生じる。
但しこの場合、Aが使用した綱に十分な強度があるかどうかを判断しなかった落度はあるが、上記の緊急事態では冷静な判断を要求しにくい。Aが使用した綱が太さや材質から見て切れやすいことがAに容易に判断できた場合を除き、通常はAに重大な過失があったとは言えないと考えられる。
捕捉:
「善意でしたことに損害賠償責任が生じるのであれば、善意で何もできなくなる」のではなく、
「善意で行うのであれば、それなりの注意が必要」という事を意味する。
(抜粋終わり)
だが実際そういった事態に遭遇した時「善きサマリア人の法」が適用されない日本ではかなり勇気の要る行動であることは確かであり、最悪の場合責任を問われる可能性がある。
「登山はリスクテイキングなもの」と理解はしていても自身に対する事だけと思いがち。
自分だけは「裁判沙汰になるようなことはない」と思っている人に是非読んでもらいたい1冊。
2013/03/30追記
上級救命講習修了。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
楽天ブックスはこちら↓
|
どれも興味深い事例ばかりだったので各タイトルを紹介(きっと気になるタイトルがあるハズ)
縦走登山
01.登山同好グループの山行:晩秋の悪天候で遭難
02.登山同好グループの山行:置き去りにされたメンバーが死亡
03.社会人山岳会の山行:慣れない岩稜コースでの転落事故
04.単独同士の即席パーティー:稜線から転落し死亡
05.登山道でのすれ違い事故:他パーティーのザックが当って転落
06.他パーティーの救助義務:善意の救助があだに(↑上記例)
07.登山道での落石事故:登山者が誘発した落石でけが
08.登山道での落雷事故:雷注意報の出ているなかを行動して被雷
09.仲間同士の登山における安全配慮義務:仲間の行方不明を放置
10.山行中の物損事故の賠償責任:不注意でテントが燃焼
冬山登山
11.社会人山岳会の山行:メンバーの1人が雪崩埋没死
12.社会人山岳会の山行:雪山初心者の滑落事故
13.大学山岳部の山行:冬山合宿で大学一年生が滑落死
14.公募による冬山登山講習会:受講生が雪崩埋没死
15.公募による冬山登山講習会:受講生が雪庇を踏み抜いて転落死
16.ガイドによる雪山ツアー:雪崩危険区域での雪崩事故
17.ガイドの確保ミス:コンティニュアス・ビレイに失敗し滑落
18.ガイドとの登山:悪天候でルートを見失いビバーク中に死亡
19.最後の食糧:冬山で仲間が衰弱死
20.デポ品の盗難:当てにしていたデポ品がなく遭難
21.雪山での巻き添え事故:他パーティーの滑落に巻き込まれて死亡
22.冬山での救助義務:遭難寸前の登山者に遭遇
岩登り・沢登り
23.岩登りでの落石事故:岩登り中に落石を誘発し他パーティーが死亡
24.ベテランと初心者のパーティー:岩登り初心者にリードさせて滑落
25.岩場での巻き添え事故:トップの滑落に巻き込まれて死亡
26.岩登り中の確保ミス:山岳地帯の岩場での確保の遅れ
27.岩登り中の確保ミス:ロアーダウンの確保に失敗
28.岩登り中の確保ミス:ゲレンデでの注意散漫による確保の失敗
29.初めてのクライミング:トップロープの支点設置ミス
30.ガイドによる沢登りツアー:沢登り中、増水に流されて死亡
ツアー登山
31.民間団体の公募登山:雪山のツアー登山中の滑落事故
32.旅行会社主催のツアー登山:ツアー登山中に参加者が悪天候で疲労凍死
33.ハイキングクラブ主催の公募登山:道迷いで下山遅れ
34.旅行会社の公募登山:ヒマラヤで滑落死
35.旅行会社の公募ツアー:海外でのトレッキング中に高山病で死亡
36.ツアー登山における交通機関のトラブル:重要な仕事に支障が
37.前宣伝との大きな落差:説明内容と異なるツアー登山
38.キャンセル料の取り扱い:ツアー登山のキャンセル
39.外国での災難:知らない間にザックに大麻が
40.外国での災難:海外でのツアー中に交通事故に巻き込まれてけが
登山にともなう諸問題
41.登山用具の欠陥:プラスチック製登山靴の破損による事故
42.登山用具の欠陥:アイスバイルの破損による事故
43.登山道の整備不良:登山コース上の鎖の不備による転落事故
44.林道上での落石事故:林道で落石に遭ってけが
45.記載ミスと遭難の因果関係:ガイドブックの記載間違いによる事故
46.捜索費用の負担義務:雪崩による長期行方不明者の捜索
47.山岳事故と山岳保険:ガイド登山での死亡事故
48.車の事故と保険:山へ向かう途中、車の自損事故でけが
49.免責誓約書の効力:講習会参加者が誓約書を提出
50.山はだれのものか:登山やクライミングの禁止措置
51.岩場はだれのものか:土地所有者が岩場への立ち入りを禁止
52.ルートはだれのものか:岩場の使用方法で対立
53.自然保護と登山の権利:自然保護のための登山の制限
社会と登山
・山岳事故における法的責任
・法的責任とリーダーの権限
・登山における危険性の認識
・危険の引受法理
・ツアー登山の問題点
・外国での登山と自己責任
・良好な自然環境を守るために
・登山と休暇
・登山と転勤
・登山とペット
・登山と自己決定
・登山と法律
・引率登山と自主登山
・法的紛争と人間関係
・現代社会と登山
資料:登山事故関係の判例一覧表
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2012/11/19追記 「救助隊に過失」 積丹岳遭難死 道に1200万円賠償命令 札幌地裁
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。