へたれ山ヤの漢気日記

タイトル：日本のヤマネ
著者：中島 福男
出版社：信濃毎日新聞社
個人的お勧め度★★★★★

とても愛くるしいヤマネ。特に冬眠中のボールのように丸まった姿はなんとも可愛い。
この本は分布と生態を学術的に詳しく解説してあり興味深く楽しく読める。

謎が多く1970代まで珍獣とされてきた。
勝手な思い込みで高山性の生き物だと思っていたが、身近な暖温帯低標高の発見が相次いでいる。

ヤマネについて初めて知った事柄抜粋。
・分類学上では世界で8種。グリルルス属にニホンヤマネだけが属し「1属1種」の日本固有種の珍獣。
・敵に襲われるとトカゲのように尻尾を切って逃げることがある（短い個体はその跡らしい）
・起床時間がかなり正確。
・冬眠時は体温を0度近くまで下げる。
・ヤマネには8種ものダニが寄生。うちヤマネだけを宿主とするダニが1種。
・清里にはヤマネを保護するために道路に「ヤマネブリッジ」なるものがある。

またヤマネは昔から謎の珍獣として色々な方言で呼ばれている。
どれも風情があってとても面白いので下記に紹介。

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a：生理に由来
・コオリネズミ（氷鼠）-群馬・高知-冬眠の際に体温を氷点近くまで下げることから。
・ヤマットウシ（山凍子）-長野県南佐久地方-山にいる凍みた鼠から。
・ヒネズミ（火鼠）-徳島-冬眠で仮死状態を火で暖めると生き返って元気になることから。
・シネネコ（死寝鼠子）-長野県諏訪地方-死んだように寝ている状態から。
・ナマケネズミ（怠鼠）-岐阜県-昼間も日内休眠し不活発で半年も冬眠することから。
・ノロ（鈍）-奈良県大塔村-日内休眠や冬眠中は体温を下げていて動きが鈍いことから。

b：生態に由来
・キマワリ（木回り）-鳥取-樹洞や巣箱から出て木の幹に纏わりつきながら螺旋状に上ることから。
・キネズミ（木鼠）-徳島・岐阜・奈良・静岡・熊本・愛媛・東京奥多摩-木上生活から。
・ヤマリス（山栗鼠）-隠岐-里山のリスよる奥深い山地に生息するリスに似た意味から。
・ヤマネズミ（山鼠）-栃木・奈良-山の鼠から。「古事類苑」ではヤマネ＝山鼠の漢字を当てる。
・トウミンネズミ（冬眠鼠）-群馬-冬眠する鼠の意。
・カシモマ＝カシモミ（樫鼯鼠）-熊本県上益城郡-モミ＝ムササビ（鼯鼠）、モマ＝ムササビ・モモンガ。

c：形態に由来
・キブスマ（木衾）-山梨-平べったい体型から。ムササビ＝ノブスマ。
・コバンギ（小晩擬）-静岡-モモンガもどきの意。ムササビ＝大晩、モモンガ＝小晩。
・キスゴ（木鼠子）-奈良-栗鼠＝木鼠。リスの仔の意。
・マリネズミ（毬鼠）-静岡・山梨・熊本・広島・群馬-体を丸めて日内休眠＆冬眠することから。
・タマネズミ（玉鼠）-埼玉県秩父地方・東京奥多摩-上記マリネズミと同じ。
・コダマネズミ（小玉鼠）-長野・秋田-上記に加えてゴルフボールくらいの小さな玉になることから。
・キノコダマ（茸玉）-青森-冬眠中の形が丸いキノコのように見えることから。
・リスネズミ（栗鼠鼠）-静岡-リスに似たネズミの意。
・ハツカネズミ（二十日鼠）-奈良-ハツカネズミ＝小鼠（コネラ）から小さいネズミの意。

d：その他（俗信）
・クダギツネ（管狐）-山梨
・ビャッコ（白狐）-長野県南佐久地方
・オコジョ-御嶽山

e：外国（共に「7ヶ月の眠り屋」の意）
・英語：セブンスリーパー（Seven Sleeper）
・ドイツ語：ジーベン・シュレファ（Siebenschläfer）


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