へたれ山ヤの漢気日記

タイトル：探検家、36歳の憂鬱
著者：角幡 唯介
出版社：文藝春秋
個人的お勧め度★★★★★＋α

早稲田探検部出身の探検家・角幡唯介氏の新刊。
ひたすら「うんうん」と頷きながらページをめくる手を止められなかった。

冒険物の書籍といえば自分の偉業を半ば自慢気味に記するものが多い中で、この著者はそういった内容は殆ど無く「冒険（ノンフィクション）」の定義に恐ろしいほど真面目で真摯な考えを述べている。

一番印象的だった一節（そのまま引用）
”私がこの時の冒険で感じたことは、表現は常に純粋な行為を侵食しようとするという、行為と表現の間に横たわる関係性だったと思う。書くことでも映像をとることでも何でもいいのだが、結果として表現に置き換えることを前提に何かの行為をする場合、その行為の純粋性を保つことは想像以上に難しい”

前後の文章を読んだ者にしか分かりづらいかもしれないが、要するに記録や表現（書籍や映像など）に残そうとする行為がその時の純粋な冒険や探検を脚色しかねないということ。
最近よく思う自分の行為に例えると一つの山行を行う際に必ず記録（登山記録やブログ）に残すという考えが常に頭にあり、本当にその山行の楽しみを純粋には味わっていないような気がしていた。
あわよくばブログが面白くなるような「ネタ」を求めている面さえある。

雑誌「ムー」なんてマニアックな単語が出てきたり「剱岳3000m峰化計画」とか面白い内容満載。
各章の間にある著者ブログからの引用「from BLOG」も思わず笑ってしまう。
だがこんな著者をあの自称サバイバル登山家の「子どもは三大北壁」という言葉で納得させるとは･･･

とにかく激しくお勧めの1冊。


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【目次】

・探検家の憂鬱
・スパイでも革命家でもなくて探検家になったわけ
from BLOG：「さよなら早川荘」
・行為と表現 -実は冒険がノンフィクションに適さない理由
from BLOG：「過食がとまりません」「万太郎谷」「北海道新聞」『ひと』欄」
・震災 -存在しなかった記憶
from BLOG：「ピルグリメージ・メソッド」「マルタイ棒ラーメン」「魂が引き裂かれそうな苦しみ」
・雪崩に遭うということ
from BLOG：「夢の女」「地震」「ジョアヘブン到着ならびに大宅賞」「マザーズ」
・富士山登頂記
from BLOG：「錫杖そして三大北壁へ」「しもやけ」
・北極点、幻の場所
from BLOG：「大武川一の沢大滝だった」「『宿屋めぐり』『パンク侍、斬られて候』＆米子不動黒滝」
・グッバイ・バルーン


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